140億の神経が繋がり,情報を瞬時に処理していく。人間の脳内と同じものが,今,電子回路上に,そして地球上に造られようとしている。
科学雑誌『ネイチャー』の6月22日号に,大脳皮質のニューロンネットワークを模して設計された電子回路が発表された。人間の脳内では,ニューロンをつなぐシナプスがクモの巣のような構造を持ち,興奮信号と抑制信号で相互作用を行っている。
人間の脳内には140億個のニューロン(神経細胞)があるといわれている。それがシナプスによって複雑に繋がり,その繋がりにより,情報を処理している。コンピューターの情報処理のカタチと,人間の情報処理のカタチを比べると,特別なプログラムが必要なく,処理を行う時間が一瞬で済む人間の脳は,情報処理の理想だ。ニューラルネットワークによる電子回路,発想としては古いが,実用は難しい。140億のニューロンの繋がりをどのように理論的に制御しているのか,想像もつかないからだ。
だが,そのニューラルネットワークを,現在の,そして未来のワイヤードネットワークの姿と重ね合わせることは容易だ。『サイベリア』の著者ダグラス・ラシュコフは,地球上に配置された人間がネットワークで接続しあうことで,地球自体の意識が覚醒され,感情や知性を生み得るとしている。地球は,やっと理想の情報処理システムを手に入れた,ともいえる。
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